原子力発電のコストはこれまで、火力発電や水力発電に比べて安いと説明されてきました。たしかに、1kWh当りの発電コストは、比較的安いといわれるLNG(液化天然ガス)火力とそん色ないレベルです。石油や水力に比べると明らかに安いといえます。資源エネルギー庁のデーターでは、この発電コストの根拠は、原子力発電の運転年数を40年、設備稼働率を80%として運転した場合の試算です。つまり、原子力発電を最大限の能力で運転した場合の想定コストです。
原子力発電では、運転だけでなく、放射性廃棄物の処理・処分費用も考える必要があります。この費用は、発電コスト試算の中に含まれていません。その理由として、放射性廃棄物の最終処分場が未定であり、コスト計算が困難であることをあげています。核燃料の最終処分の費用は、資源エネルギー庁のデーターでは、18兆8000億円にのぼるとされています。仮にこの費用を原子力発電コストに含めると、発電コストは大幅に上昇することは避けられません。
また、東日本大震災に伴う原子力発電事故の補償費用などは、発電コストには含まれていません。それらの費用を考慮すると、原子力発電コストは他の発電に比べて決して安くないと言えます。
●Information
資源エネルギー庁